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前処理を制する者がめっきを制する② ~なければ作ればいい!

皆さんお元気ですか。

 

研究室の あっくん です。

 

レバー色の鼻が可愛い、せいちゃん(右 本名 静/クリーム/♀/5歳)。

 

そして、神秘的な瞳を持つ、ソラ(左 本名 宇宙/ブルーマール/♀/4歳)です。

 

この2匹はお昼寝するときも、ご飯を食べるときも、水を飲むときも常に一緒、ベトベト仲

 

良し姉妹です。

 

せいちゃんがソラに対して毛繕いをしてあげるところなんか、ほっこりしますよ。

 

 

せいちゃんは、名前のとおり、おっとり系の静かなお嬢様タイプです。

 

ですが! おやつのときは、ボス犬のあっくんをも凌ぐオーラを放つ、影の支配者と噂され

 

る実力者です。

 

その一方で、ソラは最近 「子宮蓄膿症」 という病気になってしまい、緊急手術の末、なん

 

とか一命を取り留めました。

 

この病気は、早期発見時ではその生存率が高いと一般的には言われていますが、ソラの

 

場合は、その発見が1日遅れただけで命を落としていた、または腎不全などの致命的な

 

合併症を起こしていた可能性が高かったらしいです。

 

犬を飼っている方へのご参考になるかは分かりませんが、ソラは1日目で急にご飯を

 

食べず元気もなく、2日目でぐったり寝ることがほとんど、3日目で自力では起き

 

上がれず、そのまま手術という流れです。

 

種々の病気に共通することですが、“食欲” と “元気” がなくなったら、

 

それは “合図” です。

 

少しでも心配になったときは、迷わず病院へ連れて行ってあげて下さいね。

 

私もそうでしたが、「明日には元気になるだろう、ガッツリ食べるだろう」 は文字通り

 

命取りです。

 

その間にも、喋ることができない動物はひたすら痛みに耐えていますよ。

 

こればかりは、こちらが気付いてあげるしかないんですよね、いや、本当に…。

ところで、錆びにくい金属と言えば、ステンレスやアルミニウムをイメージされるのでは

 

ないでしょうか。

 

なぜ、これらが錆びずに金属らしい光沢を維持できるのか、と言いますと、その金属表面

 

は不働態膜と言うバリアーに覆われているからです。

 

この不働態膜は、緻密でナノレベルの薄い酸化被膜がその正体であり、それ自体が酸化物

 

ですのでそれ以上に錆びる(酸化する)ことはありません。

 

そのため、ステンレスやアルミニウムは錆びずにいられるわけです。

 

 

酸化物をもって酸化を制するとは、なんとも皮肉なお話ですよね…

 

さて、このような不働態膜を有する金属に対して、めっきを施すご依頼は弊社でも承って

 

いますが、どのような処理を行っているのでしょうか?

 

まずは脱脂して、エッチングして、酸活性して…などと一般的な前処理の後に、めっきを

 

施すと、恐らく下の写真のように豪快な剥離が起こってしまいます。

お察しのとおり、この頼もしい不働態膜は、めっき側の視点からでは邪魔者以外の何者で

 

もありません。

 

 

母材が金属の場合、金属結合と呼ばれる強固な結合によって、母材-めっき間のしっかり

 

とした密着は成り立ちます。

 

 

ところが、その母材に金属ではない不働態膜が存在すると、不働態膜とめっき間が接する

 

ことになり、そこでは分子間力の弱い密着となってしまいます。

 

 

つまり、めっきすらもバリアーの対象になってしまうと言うことですね。

 

 

 

だったら、「この不働態膜を除去すればええですやん!」 ってことになりますよね?

 

確かに不働態膜の除去は、特定の薬液にディップするなどの活性化によって簡単に実現します。

 

 

しかしながら、その再生も簡単で、空気に接触することによって

 

「僕らを守るヒーロー!不働態バリアーマン復活!!」 と言うシナリオが用意されて

 

いるのです(涙)

 

潰しても潰しても立ち上がる、まさにヒーローのような生き様ときたら、

 

そりゃもう…(汗)

しかし、私たちも黙ってはいられません。

 

 

ならば、我らの頼れる味方! ニッケルストライク星人登場!

 

不働態膜に対応する前処理と言えば、ニッケルストライクめっき。

 

 

これはアルミニウムには使えませんが、ステンレスにはかなり有効で、この業界では知ら

 

ない人はいないくらい有名な前処理です。

 

 

その内容は、強力な酸と陰極電解の水素による活性力で不働態膜を除去しながら、再生

 

させる間もなく、同時にめっき(核)を形成してしまうものです。

 

活性化とめっきの合わせ技で、不働態膜を潰しながら、再生する前にめっきを付けてしま

 

えば良いんです。

 

最低限のめっき形成さえできてしまえば、あとはこっちのもの。

 

ここで形成されためっきは、既に良好な密着性を持っており、さらに本めっきとの相性に

 

問題はありません。

 

 

不働態膜の復活を恐れることはなく、安心して本めっきを施せば任務完了!

 

めっきにとって不利(密着不良)となる母材表面状態(不働態化)ならば、有利になる

 

表面状態を作れば良いのですよ!

因みにアルミニウムへのめっきに関しても、ダブルジンケートと呼ばれる亜鉛めっきを

 

前処理に置くことで密着性を確保できます。

 

 

ダブルジンケートの役割や、なぜ 「ダブル」 なのかも重要なお話ですが、これはまた

 

今度お話できれば…。

 

 

それではまた。

このブログを書いた人

あっくん

技術研究室